観察は「攻めの行為」

日常の職場の中における「学び」は、自分の仕事からだけではなく、先輩・上司・同僚といった周囲の人からも得ることができます。本トピックでは「観察」について考えます。

思い出で終わらせない

「自分の部下/後輩にせっかく観察の機会を与えたのに、何も学んでない…」
そう嘆く上司や先輩社員にくわしい事情を伺ってみました。すると、

・営業訪問に10回同行させたのに「先輩すごいっすね。自分にはできません」で終わってしまった。

・競合会社も参加する展示会に参加させ、各社のプレゼンテーションを見学する機会を与えたのに、「たくさん名刺交換しました。異業種交流っていいですね」と思い出作りで終わってしまったようだ。

・ずっと隣で仕分け作業を見ていたはずなのに、「これはどうやるのですか?」と基本的な事をいつまでも訊いてくる。何を見ていたの?

あなたはこんな事、やっていないですよね?

周囲の人を両極端に分けてしまう

一方で、若手社員側の言い分を聞いてみましょう。
たまに、こういう言い方をする人がいます。

「私の周りには、将来の目標になるような先輩や上司がいません。何も学べません。私は不幸です」

手本になるような人を「ロールモデル」と言う場合もあります。で、そのロールモデルがいないことを嘆いている。気持ちはわかりますが、そんなに高望みしないでください。あなたの将来イメージにぴったり合うような人がいるというのは、よほど幸運なことです。

もしかして、あなたは周囲の人を

「この先輩(上司)が私の目標。この人から全てを学ぶ」
「この先輩(上司)の存在は、私の職業人生に何の意味も持たない」

と両極端に分けていませんか? それはやめてください。もったいない。どんな人からも学ぶことはできます。

「部分」の観察

あなたの上司の「全体が人としてどうか」ではなく、学びたい部分、もっと言うと「盗みたい部分」を見つけて、その部分に注目して観察してください。

観察というのは受け身ではなく「攻めの行為」です。人は注意を向けた情報だけを取り込みます。意識を向けていないと、聞こえたはずの台詞や、見えていたはずの動作も取り込まれることはありません。

「あの先輩のこういう所」「あの上司のこんな時のやり方」…観察から学べることはたくさんあります。以下のような「部分」に着目してみましょう。


何を観察するか? ~観察する「部分」~

・準備の仕方、順序、段取り、タイミング、まとめ方、選択、判断など
・言動(説明の仕方、質問の仕方、意見の伝え方、聴き方、ふるまい方など)
・成果物(レポート、企画書、提案書、議事録、報告書など)
・あなたの作った「マイセオリー」(自分ならこうするが、先輩や上司はこういう時どうするのか?)


事前に「何を観察するか」を決める

若手営業担当のAさんは、お客様の経営課題を質問するのに苦労していました。相手から見ると自分はまだヒヨっ子。「経営課題は何ですか?」と尋ねても、「そんな事、君に伝えてどうなるのさ」という顔で見られて適当にあしらわれるばかり。

困って上司に相談すると「先輩のBさんに営業同行しろ」と言われました。Bさんは自分と年齢があまり変わらないのに、お客様の課題を踏まえた良い提案書を作ります。上司には「どんな風に課題を聞き出すのか、注意して見てこい」と言われました。

Bさんは何をしていたか。「御社と同業のある会社では、○○という課題があって△△を導入されました。御社でも同様の課題はあるのでしょうか?」と、同業他社の事例を呼び水にして質問をしていました。お客様は「いや、ウチの場合はちょっと違って…」と自社の課題の説明を始めました。

後に、Aさんはしみじみと上司にこう報告したそうです。
「Bさんが常に最新の導入事例を勉強されている理由がわかりました。ただ知識をつけるのではなく、ヒアリングの時の材料として仕入れていたのですね。Bさんに同行するのは初めてではないのに、今まで気づきませんでした。私も事例を勉強します」

事前に「何を観察するか」を決めておくことで、欲しい情報が入ってくる確率はぐっと高くなります。

本質をつかみ、自分のマイセオリーへ

観察したらそれで終わりではなく「本質」をつかみましょう。本質をつかめば、ただその通りマネをするではない、応用の効く自分のノウハウ、マイセオリーになります。

本質をつかむにはどうすればいいか? 「質問」です。

「先輩すごいですね! どうすれば先輩みたいになれますか?」

こんな質問では、よほど人の良い先輩でない限り、相手にしてくれません。
もっと具体的に、観察した事実を用いて質問します。

「先ほどの訪問で、お客様に○○を説明する際に『☆☆☆』という言い方をされていましたよね。お客様はとても納得されていましたが、先輩は意識してああいう言い方をされたのですか?」

このように訊かれたら先輩だって嬉しいものです。「よく見ていたねえ!」と感心して解説してくれるでしょう。

他の状況でも同様です。

「どうして、このような順番で行っていらっしゃるのですか?」

「なぜ、報告書にこの項目を入れたのですか?」

「先輩はこのタイプの案件ではいつも○○をしていますが、それが受注のポイントなのでしょうか?」

ピンポイントで、具体的な質問をしてみましょう。

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