はじめに:面白い仕事

「面白い仕事」は存在しない。
そうではなく、その仕事をいかに「面白がれるかどうか」だ。
色々な人をみて、そう実感しました。

一人でやっている花屋や接骨院、地質調査会社、学習塾。
夫婦で営むリサイクルショップ、ミシン修理屋、薬局。
地方都市の不動産屋、害虫駆除会社、水族館。
生まれたてのソフトウェア開発ベンチャー。
全国各地に支店を持つ自動車販売会社、食品メーカー。
世界を股にかけるグローバル企業。

取材を通じて、さまざまな業種・職種・役職の人たちと会話をしました。そして仕事の面白さというものは、これらの属性とはほとんど関係が無いことを知りました。

メディアで好調さを頻繁に取り上げられる業種の中にも、つまらなそうに働いている人がいました。誰からも不景気真っただ中と思われているような業種の中でも、面白そうに働いている人がいました。同じ会社や組織の中でも、同じ部署だったとしても、面白そうに働く人とつまらなそうに働く人の両方がいました。

ここでいう「面白い」とは、お笑い番組を観て面白いのとは異なります。成果を生み出した達成感とか、その仕事の意味や価値についての実感とか、腕が磨かれていく喜びや自信とか、そういったたぐいの「仕事を通じて得られる、真剣な面白さ」のことです。

どうやらこの「真剣な面白さ」は、ミカンに含まれるビタミンのように、何か特定の仕事には初めからたっぷり含まれていて、そうでない仕事にはちっとも含まれていない、というものはなさそうです。

そうではなく、与えられた仕事(それがやりたい仕事かどうかはさておき)をやりながら、その過程の中で自らつくり出すもの。ですから「面白い」ではなくて「面白がる」という言い方をしました。

では、どのようにして、真剣な面白さをつくり出しているのか。
「面白がっている人たち」の語るストーリーの中に共通して現れたのは、“発見”でした。

「これだ!」
「もしかして…!?」
「ああ、そうだったのか!」

仕事をやっている中でのふとした発見をきっかけに、その仕事のやり方自体がもっと良いものに改良・進化していきます。時には一つの発見によって、全く新しい仕事のやり方が発明されることもあります。そういった自分なりの発見をした時の事を、特にうれしそうに話していました。

たとえば「書類のまとめ方」や「商品の説明の仕方」や「納期遅れの防ぎ方」。これらは、他人から見ればささやかな発見に過ぎないかもしれません。ですが、この通りやれと言われたのではなく、実際の仕事の中から自分で発見したことに価値があり、喜びがあります。

ささやかな発見が紡ぎあげられ、次第に新たな「よりよい仕事のやり方」が織り成されていき、やがてそれが積み重なり、その人や組織なりのスタイルとして結実します。

そうしてつくられたスタイルは、ほぼ間違いなく「その人の味」や「その組織らしさ」として、仕事の成果や提供している商品・サービスに組み込まれています。だから、差し出す本人にとっても、受け取る相手にとっても、うれしくて気持ちがいいのだと思います。

仕事を面白がるということは、仕事の中での自分なりの発見を増やすということです。

もし、目の前の仕事が毎日新しい発見に満ち溢れているとしたら、退屈になるはずがありません。それに、発見によってよりよい仕事のやり方が生まれるのであれば、当然仕事の成果も上がります。

さらに、発見を増やすという試みを、同じ職場の人たちや関係会社、顧客などと力を合わせてやれるとしたら、得られる成果はより大きなものになるでしょうし、仕事上の人間関係もまた大きく変わります。

発見は、仕事の生産性と充実感を両立させる妙薬です。

仕事を進めていく過程の中で発見を生み出し、その発見を材料にして仕事のやり方自体を進化させていく。この一連の行為について詳しく解説することを目的に、本書は作られました。

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