タイプ別 本書の使い方

本書はさまざまな企業や組織で、新入社員から経営幹部まで色々な職位向けの社員研修やワークショップで使われてきました。本書がどのように読者の皆さまの役に立てるかについて以下にまとめました。

<新入社員〜若手社員の方へ>

仕事を通じた学び方を早いうちに自覚しておくと、それだけ成長のスピードも早くなります。自分は要領が悪いとか、センスがないとあきらめてしまう前に、本書を通じて「仕事をやりながら学んでいくとはどういうことか」を言語化できるようになってください。

言語化できるようになると、自分の学び方のクセや見落としがちな点が明らかになります。明らかになればしめたものです。日々の仕事の中で、自分の仕事の受け方や振り返り方も調整できるようになります。それが先述の「1年1年を着実に積み重ねられる人」への第一歩です。

経験が浅いうちは自分一人で学べることには限度があります。かといって、あなたの上司や先輩はいつも手取り足取り教えてくれるわけではないでしょう。学び方がわかると「周囲の人からの支援の引き出し方」も上手になります。

<中堅〜ベテラン社員の方へ>

積み重ねてきた経験は、武器にも弱点にもなります。
さまざまな難局を乗り越える中でつくられた自分なりのやり方を、慣れ親しんできた仕事だけではなく異なる環境でも上手に応用させたり、そこから新たなキャリアの展開を切り拓いたりできる人がいます。一方で、自信の源であった経験がいつの間にか変質し、融通の利かない固定観念として自らの足を引っ張ってしまっている人もいます。

後輩たちへの影響の与え方も同様です。あなたの経験情報が後輩にとって「ありがたい知恵」となるか、それとも「押し付けがましい武勇伝」となるかは、紙一重です。

本書は、あなたに備わっている豊富な経験情報を十分に活用するために、そして現在の仕事をより刺激的で発見に満ちた機会にすることに役立ちます。

<指導者の方へ>

ある会社のマネージャーが、
「私の会社の場合、OJTはOn the Job Training の略ではなくて、(O)お前等(J)自分勝手に(T)適当にやれ、の略なんですよ」
と言っていました。(胸を張って言うことではありません)

だからといって、OJT を「(O)惜しみなく・(J) 十分に・(T)手取り足取り」 にしろというわけではありません。何でも教えてしまうと、自分で考えなくていいということを学習してしまいます。その結果、

「教わっていないので、できませんでした」
「この会社は、私をどう成長させてくれるのですか?」

という受け身で他責な発言があたりまえになってしまっては大変です。

あなたに期待したいことは、仕事の中身を教えることだけではなく、「仕事を通じた学び方」そのものを指導してほしい、ということです。

本書は、学び方についてできるだけ具体的に記載しています。本書で使われている「ゴールイメージ」「3点セット」などの言葉は、言いたいこと・指導したいことをピンポイントで届けることに役立ちます。うまく引用する事で、指導の負荷を軽減してください。

できるだけ早い段階で、あなたが指導する新人や若手社員が、「あなたが関与しないと学ばない」から、「自分で経験から学びを紡ぎだせる」ように。早い段階から言及する事で、結果的に早く独り立ちできるようになります。「魚を代わりに釣ってあげる」のではなく「魚の釣り方」を教えてあげてください。

<人事教育部門の方へ>

本書は、業務品質や遂行能力を高めることについての詳細な解説書として役立ちます。エドワーズ・デミングらが提唱したといわれる「PDCAサイクル」や、デイビット・コルブによる「経験学習モデル」などを使って教育をすることが多いようですが、抽象的な概念の説明を聞いただけで、ただちに実践できる人はなかなかいません。

その結果「ウチはDoばかりでCとAがない」とか、「内省(リフレクション)がきちんとできない社員が多い」というように、そこで習った抽象的な言葉で問題を指摘できるようになっただけ、という所で停滞してしまいます。

やってもらいたい事・期待している事を社員にきちんと理解してもらいたいのであれば、手を抜かず、もっと言葉を尽くすべきです。

業務品質や遂行能力の向上、言い換えると「与えられた業務を全うしながら、業務のやり方や成果を自ら継続的に高めていく」ということについて、言葉を尽くして社員に届けたいとお考えであれば、本書は必ず役に立ちます。

また、本書は「さまざまなスキル研修を受講する準備」としても役立ちます。ある会社で、「◯◯力」「◯◯スキル」などの多様な研修メニューを企画して社員に提供している人事部の担当者が、次のような話をされたことがあります。

「全員の役に立ってほしいという思いで企画しているのですが、どうしても受講者の反応には差が出てしまいます」

具体的には、以下のようなパターンに分かれてしまうそうです。

1. 研修が始まってすぐに拒絶反応を示す人。「ウチの部署は特殊だからこの研修の内容は合わない。押し付けないでほしい」

2.「とても勉強になりました」と言っていたのに、後日現場で話を聞くと全く活用していない人。「いやあ、私の仕事だと、あれを実践できるような機会がなかなか無いのですよ」

3. うまく自分の中に取り込んでくれる人。自分の経験と照らして使えそうな部分を見つけたり、使えるようにアレンジしたりするのが上手で、そういう人は、研修中の反応や発言ですぐにわかるとのこと。

1と2の人たちは「消費者的」に見えます。いい買い物をしたい。自分に合うものを選びたい。合わない物は使えない。もっと他のものを用意して。

対して3の人は「生産者的」です。よりよい仕事のやり方をつくり出すのは、あくまで自分。会社が用意する研修や書籍は、生産するために必要な「原材料」である。使いやすそうなところから、使っていけばいい。そのままで使いにくかったら、自分で使いやすくすればいい。

本書は、仕事の中での学びを「生産者」として理解し実践することに役立ちます。それにより、会社が用意する教育機会の受け取り方も「現場に合わない模範解答の押しつけ」から「自分なりの料理をつくるための原材料」に変わります。

本書に登場する様々な考え方や言葉は、「学びを自分たちで継続的に創造する集団」を育んでいくための、同僚や上司/部下間の共通言語として役に立つでしょう。

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