どのような職種・仕事であっても実行する際にはコミュニケーションが大切だとよく言われます。
「わかっているよ。つまり『報連相』でしょう?」
あなたはこう思うかもしれません。
たしかに「報連相は仕事におけるコミュニケーションの基本」とよく言われています。
初めて聞いた人のためにちょっと補足します。「報連相」とは「報告・連絡・相談」の頭文字をとったものです。一般的に以下のように解説されています。
〔報告〕仕事の経過や結果を発注者に知らせること。報告までが仕事。
〔連絡〕関係者に仕事上の事実や情報を伝えること。適切に、確実に。
〔相談〕困ったときにアドバイスを得ること。一人で悩まずに早く相談する。
ところがこの「報連相」、わかっていてもなかなかうまくできないことが多いものです。
そもそも報連相という言葉だけを知っていてもあまり意味はありません。
職場での会話には「報告のような連絡」や「報告や連絡という名目だが、実は相談」 というものもたくさんあります。報連相の3つのうち、どれか1つに切り分けられるものではありません。
※「報連相」という言葉自体、もともとは風通しのよい職場を作るための上司の心構えとして使われていたものが、いつの間にか部下側の基本行動を意味するものに変質したとも言われています。
他にも「確認」や「依頼」という言葉を使ったほうがぴったりするコミュニケーションだってあるでしょう。
肝心なのは「報連相」という言葉ではなく、実際に何を行うかです。
そこをおろそかにしてしまうと、以下のような事が起こります。
・「どうしてもっと早く報告しないのか」と上司に叱られた。でも「もっと早く」と言われてもタイミングがわからない。あまり早すぎると「もっときちんと仕上げてから報告しろ」と言われる。
・困っていたので相談したら「自分で考えろ」と言われた。相談せずに自分で考えていたら「なんでもっと早く相談しないんだ」と言われた。
・連絡しておいたはずなのに、催促したら「そんな話聞いていない」と言われた。
・他部署との共同作業。順調だったはずなのに、終盤になって上司に「向こうから『話が違う』と文句言われたよ。どうなっているの?」と問い詰められた。
・相談する必要性はわかっていても、なかなか行くことができず、時間だけが過ぎてしまった。
・みんなの予定を確認してミーティングを設けたのに、何もアイデアが出ず、何も決まらなかった。
このような事を繰り返してると、少しずつ、でも確実に、あなたの「信用」は失われてきます。信用が失われると…
・「何やった」「次は何するんだ」「まだか」「いつ終わるんだ」「ちゃんと間に合うか」「本当に大丈夫か」…息苦しくなるほど、必要以上に仕事を細かくチェックされる。
・「あなた専用納期」の設定:納期が2週間後の仕事でも、信用できないから「1週間後に提出してね」と言われる。
・指導するより自分でやったほうが早いと思われて「もういいよ、後はやっておくから」と仕事を取り上げられる。
・誰でもできるような無難な仕事しか任されなくなる
目的は「仕事を前に進める」こと
報告や相談などのコミュニケーションは、「言われたからやる義務的な対応」でも「念のためのアリバイ工作」でもありません。「仕事を前に進めるための手段」です。どれだけ多くの言葉を交わしても、その仕事が前に進まなかったら意味がありません。
相手の立場に立ったコミュニケーション
コミュニケーションには必ず相手がいます。「自分が言いたいことを言うだけ」「伝わっているはず」「わかってくれているはず」というような自分の立場でしか考えていないコミュニケーションでは、仕事は前に進みません。
自分の伝え方が適切かどうか、相手の立場に立って考えたことはありますか? ちゃんと伝わらないと、相手もどうしたらいいかわかりません。周囲の支援をうまく引き出せない理由の多くは「伝え方」にあります。
コミュニケーションに関するマイセオリー
「報連相」という一言で済ませるのではなく、もう少し具体的な部分まで言語化することで、コミュニケーションの良し悪しを資質とかセンスで片付けるのではなく、技術として高めることができるようになります。
「仕事を通じた学び方を学ぶ本」の巻末に、「職場のコミュニケーションに関するマイセオリー」を掲載しました。1つ1つは断片的ですが、すべて受講者の実体験から作られた、現実的で具体的なマイセオリー(自分なりのやり方)です。