ユーザーの声:株式会社IHI様

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株式会社IHI 人事部 人材開発グループ 課長 和住光一郎氏(写真中央右)、同グループ 間所 美帆氏(中央左)、田中 結氏(右端)、粥川 僚氏(左端)に「仕事を通じた学び方」を複数階層の共通教育コンテンツとして導入された経緯や、活用方法などについて伺いました。


〔株式会社IHIについて〕
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1853年(嘉永6年)創業の総合重工業メーカー。2007年に石川島播磨重工業からIHIと社名変更。各種プラント、航空エンジン、宇宙開発など幅広い分野で事業を展開している。連結売上高15,903億円(連結 2018年3月期)、従業員数29,706名(連結 2018年3月末)


グループ合同の階層別研修に採用

 
ー IHIでは「仕事を通じた学び方」をどのように使われているのですか。

IHIグループ全社を対象とした「グループ合同階層別研修」で活用しています。この研修は、従来まで分断されがちだった階層別教育を見直し、新人から上級マネージャーまで縦串で同じテーマの教育を行うというものです。もちろん各階層でレベル感の高低はありますが、同じテーマ・コンセプトを扱うことで、上下間の認識のすり合わせや共通言語化を図り、現場での実践を促すというねらいがあります。

縦串の共通育成テーマの1つが「PDCA」です。PDCAはこれまでも折に触れて様々な研修で言及されてきましたが、いざ実践するとなると理解や解釈がバラバラで、壁に貼られたスローガンで止まってしまいがちな言葉でもありました。「ウチはDばかりでCもAも無い」というように自己批判的な文脈ではよく登場するものの、じゃあどうするの? という話には、なかなかつながらなかったり。

それでも好景気の時代は、とにかく場数で成長するということが可能でした。しかし近年は、どの事業分野でも案件の数は絞り込まれ、品質や採算がシビアに問われます。従来の延長線上にはない、不連続な変化も当たり前のように起きています。

「今は特に問題が無いからOK」では成長が止まります。場数に頼らず、1つ1つの仕事から得られる学びを最大化できるか自分やチームの業務品質を遂行過程の中で継続的に高めることができるかが問われています。

それをグループ全体で実践していくにはもっと具体的な言葉や考え方が必要でした。そこで採用されたのが「仕事を通じた学び方」のコンテンツでした。PDCAなどの一言で済ませてしまいがちな仕事の進め方や学び方について具体的にわかりやすく説明されており、変なクセがない(他の教育等と整合性がとりやすい)ところが評価ポイントでした。

新人からマネージャーまで各階層に役立てるコンテンツだと判断して購入を決めました。その後、このコンテンツを活かした階層別研修の開発を進め、現在は階層によって異なる使い方をしています。

<リーダー研修>
日数:1日間 受講者数:年間約400名(複数回に分けて実施)

<中堅社員研修>
日数:1日間 受講者数:年間約500名(複数回に分けて実施)

この2階層では、複数のテーマが盛り込まれた2泊3日の合宿研修の1パートとして扱われています。事前課題として書籍を読んできた上で、実際の経験や業務を題材にしてさらに理解を深めてもらいます。「なるほど、こうやって使えばいいんだな」と現場での実践準備が整った状態が研修のゴールです。(※研修の設計・教材開発・講師は(株)ロークワット 田村が担当)

<入社3年目研修>
日数:約6時間 受講者数:年間約450名(複数回に分けて実施)

<入社2年目研修>
日数:約5時間 受講者数:年間約450名(複数回に分けて実施)

入社2〜3年目研修も合宿研修の1パートというのは上位階層と同じですが、中身が少し異なります。書籍の基本編を中心に、早いうちから知っておくべきものをピックアップし、上位階層には無いロールプレイなどを盛り込んだ設計にしています。また詳しくは後述しますが、2〜3年目研修は内製化されており、講師は人材開発グループのスタッフが担当しています。

これらを合わせると年間約1,800人がこの本に関連した研修を受講しています。

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ほぼ全ての階層別研修が、IHIグループ人材開発交流センター「I-STEP湘南」で開催されている。

「研修が終わったらこの本を貸してください」

 
ー 施策の現時点での評価について伺います。まず書籍についてはいかがでしょうか。

はじめの頃は、研修の受講前にどのくらい読んでもらえるか不安でした。研修の事前課題というものは、たいてい面倒で嫌がられるものです。

ところが研修が始まった時に各受講者の机に置かれていた本には、たくさんの付箋が貼られていました。蛍光ペンで線を引いたり、書き込みをしたりしている受講者も少なくありませんでした。そのような状態ですから、最初のセッションでの「読んで気づいたことの共有」が、いきなり盛り上がっていました。読んでみて思い当たる節が自分や部下にあったのでしょう、そのまま放っておいたら1時間くらい話し続けるのではと思うほどでした。

研修後の懇親会でも、本について多くの受講者が感想を話してくれました。
「これは後輩指導とかで困った時に何度も読み返すべきものだ」「PDCAなんて今更と思っていたけれど、面白かった。ここまで突っ込んた内容だと仕事でも絶対役に立つ」「マネージャーになる前に、もっと早く読みたかった」などと言ってくれたのを覚えています。研修に関連した読み物で、これほど受講者から喜ばれるケースは今まで滅多にありませんでした。

ある受講者は、自席に置いていた書籍を見つけた後輩に「ちょっと読んでみたい」と言われて貸したところ、その日の夕方に「ちゃんと読みたいので、研修が終わったらこの本を貸してください」と改めて頼まれたそうです。

ー 研修プログラムについてはいかがでしょうか。

読むだけではなく練習するという企画側の意図もうまく機能しました。実際の業務経験を題材とした分析やノウハウの共有を行ったところ、「他のグループのアウトプットも全て読みたい」「このような形でノウハウを共有する仕組みが会社に必要なのでは?」という希望や意見がたくさん寄せられました。

先述の「縦串の階層別研修」の効果も少しずつ出始めています。
書籍や研修で扱う「ゴールイメージ」などの言葉について、研修中に「この言葉をすでに職場で聞いた事がある人はいますか?」と尋ねているのですが、手を挙げる受講者の割合が毎年確実に増えています。

ある受講者は「半年くらい前から、急に上司が『その仕事のゴールイメージは何だ?』と問いかける事が増えて不思議に思っていたのですが、この研修を受けていたのですね。私もやっと重要性を理解できました」と研修後に話してくれました。

私たちが目指している、望ましい現場の状態は「PDCAという言葉をみんなが知っている状態」ではなく、その内実が実践されている、たとえば「仕事のゴールイメージを定義して、関係者間ですり合わせている」「終えた仕事から学んだ事が個人やチームの教訓や持論として活かされている」状態です。

だとすると「ゴールイメージとは何か、どうやってすり合わせるか」や「持論(マイセオリー)はどうやって作るのか」を共通言語、共通理解にしなくてはいけません。PDCAのようなビッグワード(抽象的な言葉)を組織内に広めていく時には、そのままではなく、より解像度を高めた言葉を作って展開していくことが大切だということを実感しています。

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本書を用いた研修の一場面。グループワークが多く施設をフル活用している。

内製化による「信頼の獲得」と「深い現場理解」

 
ー 入社2〜3年目研修の「内製化」について詳しく教えていただけますか。

以下のようなステップで内製化を進めました。

(1) 初年度は外部に研修プログラムの開発と講師を依頼
((株)ロークワット 田村が担当。以下同様)

(2) 実際の研修をオブザーブまたは受講者として参加

(3) 内製化のための各種研修ツールの開発を依頼
(テキスト、ワークシート、講師用ガイド、スライドなど)

(4) 講師養成研修を実施(内容理解+進行練習)

(5) 各日程ごとに個別準備〜講師デビュー

現在は(4)の講師養成研修も社内メンバーだけで行なっています(講師は社内講師を経験済のメンバーが担当)。出向や異動等で現時点でいない者も含めると、これまでに15人が社内講師としてデビューしました。

ー(ロークワット 田村)最初の講師養成研修を実施したとき、受講者である人材開発グループの皆さまの理解度がとても高かったことをよく覚えています。練習でも上手でしたし、何より、実際に講師デビューされた回の受講者アンケートの評価点が私が講師の時よりも高い方もいて、ちょっと複雑な気持ちになりました(笑)

もともと、コンテンツに依らない汎用的なインストラクションスキルについては、人材開発グループのメンバーは全員外部研修を受講していますので、基礎的な準備はできていたのかもしれません。

それに加えて、作っていただいた「講師用ガイド」が、研修の品質に強力に貢献しているのだと思います。かなり細かい部分まで「このタイミングで何を言うか」「なぜ、ここでこういう問いかけをするのか」「この段階まで進むと、受講者はどのような状態になるか」といった事が解説されていて、誰でも迷いなく進める事ができます。「この部分の具体的な説明は、本の何ページをそのまま読めばOK」といった書籍との紐付けによって実際に話す台詞にまで配慮がなされており、準備も効率よく進められました。

ー 実際に社内講師を経験された感想を教えてください。

私たちが研修に「事務局」として関わる時と「講師」として関わる時とでは、受講者からの見られ方が全く異なるということを実感しています。講師の役目を終えた後の懇親会では、受講した若手社員たちは「この人はプロだ」とみなして話しかけてきます。個別相談を受けることもあります。事務局に対しては絶対に見せないような、キラキラした眼差しで(笑)。そのようなポジションや信頼感を現場社員から獲得することは、人材開発部門にとって意味のあることです。

加えて、この研修の講師をすることで、現場をより理解できるようになりました。実際に現場でどのような役目を与えられていて、どのような目標を持ち、どのような成功や失敗を経験し、何を課題として抱えているのか。受講者との会話や発表、演習の成果物などを通じて多くの発見を得られます。架空のケーススタディを扱うタイプの研修では、ここまでは無理です。実際の業務や経験を題材にした演習が多く含まれる本研修の大きな利点だと思います。

当社はいくつかの研修を内製化していますが、この研修は「現場社員との信頼関係作り」と「より深い現場理解」を同時に実現できる、唯一の研修です。講師を経験したスタッフが、その後出向先でも講師をしたり、海外拠点から問い合わせを受けたりということが起き始めています。

istep07人材開発グループスタッフの多くが社内講師として活躍している。

 

ー お忙しい中、ありがとうございました。


株式会社IHIのホームページ
文中の組織・数値等は全て取材時時点(2018年8月)のものです


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